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 現代人が1回の食事でかむ回数、弥生時代の1/6です。

  あなたは一回の食事で何回くらい、かんでいると思いますか。ある調査によると、パンやハンバーグ、グラタン、パスタなどやわらかい食べ物が主流になった現代の日本人の咀嚼回数は、一回の食事につき、およそ620回。時間にすると約11分というデータがあります。
 しかし、日本人の主食がうるち米や麦で副食が焼き魚や煮野菜といった、よくかむ必要のあるものを食べていた平安時代から戦前までの咀嚼回数は、約1400回。現代の倍以上で、時間にすると20〜30分です。
さらにさかのぼって、おこわが主食で、クルミやクリ、魚の干物など硬い食べ物を食べていた卑弥呼の時代(弥生時代)には、一回の食事の咀嚼回数は3990回。なんと現代の6倍以で、時間にすると51分と1時間近くもかけていました。
 昔の人と比べて、非常に少なくなっている現代人の咀嚼回数。しかし、かむという行為は人間の健康にとって、とても重要なことがわかっています。
まず、かむことによって唾液の分泌が活発になります。唾液には消化を助け、口の中を清潔にする働きがあるとともに、最近では、唾液中の酵素が発ガン物質の毒性を抑える働きがあることもわかってきました。
また、かむことによって頭やあごの骨、顔の筋肉が発達し、表情豊かな顔立ちをつくったり、大脳の働きを活発にすることもよく知られています。
さらに硬いものをかみ砕く爽快感はストレス解消にも役立ち、かむことで肥満防止にもなるといわれています。家族の健康や子どもの成長のために、今一度、食事内容を見直してみてはいかがですか。
出典/「復元食の咀鳴回数と食時間とメニュー」神奈川歯科大学斉藤滋教授の調査より

 正しく、おいしく、楽しく食べる知恵と技術を磨こう
 「何をどう食べるべきか?」かつては食事の団樂の中で子供たちに伝わったものです。
テレビを相手に黙々とスナック菓子を口に運ぶ…、という風景も珍しくない現代は、大人も子供も正しい食のあり方を見失いがち。
その危険性がようやく指摘されるようになり、子供の頃から食の基本を学ぶ「食育」教育が学校でも推進されています。
 正しい食の知識がなければ健康を損いやすいのはもちろん、大人になる過程で育つはずの正常な味覚が未発達のまま、という人も多いようです。
味覚は舌だけで味わうものではなく、五感を使って脳で感じるもの。苦味や酸味の混じった複雑な味覚はよくかまなければ感じられず、人はよりおいしく食べるために「よくかむことの効果」を自然と身につけてきました。
 食べることは舌だけでなく脳をフルに使う活動です。食を粗末にするのは、食べることで鍛えられる脳の訓練を放棄しているのと同じ。
近年多くの犯罪で問題になる未熟な精神性は、決して食生活と無関係ではないでしょう。
食は本能の一つで、人間は本能が元気でないとたくましく生きられません。食への姿勢は生きる意欲につながり、大人になってからでは遅いのです。
家庭での第一歩は何より家族全員で食卓を囲むこと。たとえ月一回でも日を決めて続けていきましょう。
大島清 (おおしまきよし)
1927年広島生まれ。東京大学医学部卒。ワシントン大学助教授、京都大学霊長類研究所教授を経て、現在、京都大学名誉教授、愛知工業大学客員教授。専門は大脳生理学。執筆、取材、講議、講演などにエネルギッシュな活動を続ける。『子供が伸びる脳の育て方』など、脳の発達の見地から子育てに関する著書も多く記している。

 オリンピック選手村で一番患者さんが多いのは?

 オリンピック開催中の選手村には、選手や役員のケガ、病気に備えるための総合診療所があります。内科や外科、あらゆる科がありますが、リレ八ンメル大会で最も患者さんの多かったのが歯科でした。
のべ433人の患者さんのうち、歯科を訪れたのは約半数の205人。そのため4年後の長野オリンピックでは歯科医師を2倍に増員するよう国際オリンピック委員会から特別に指示があったほどです。
競技の瞬間に全力を出し切るスポーツ選手にとって、突然の歯痛はまさに命取り。少しの痛みでも集中力は低下し、ラストスパートにも差が出てしまいます。そのためコーチはトレーニング以前の条件として、むし歯を治すよう言い渡すことも少なくありません。
それほどスポーツ選手にとって歯の治療は切実なものなのです。
出典/『歯のふしぎ博物館』岡崎好秀著


 歯周病が命にかかわる心臓病の原因にも!?

 「歯周病の人はそうでない人に比べて心臓病になる確率が25%も高く、肺炎など呼吸器系の病気にもかかりやすい」とアメリカで発表されました。その原因は歯肉の炎症で繁殖した菌が、気管を通じて肺に入るため。
また血管に入ると全身に菌が運ばれて、動脈硬化などの成人病の原因になるのです。
ガン、脳血管疾患、心臓病、腎不全、糖尿病などの成人病は、ロロ本人の死亡原因の約63%。歯周病は歯を失うばかりか、命を失うリスクも高くなるということは、日常的な歯のケアがいかに大切かわかります。
口の中は温度が高く湿っていて、細菌が増えやすい環境。歯周病を防ぐには歯の表面をみがくだけでは不十分で、フロスなどで意識的に取D除くケアが必要でず。歯垢が固まると簡単には取れないので、早め早めに歯科医院で取ってもらいましょう。


 映画の中のデンタルシーン

【恋に落ちたシェイクスピア】
400年前の歯みがきを再現。
1593年、エリザベス朝のロンドン。新進の劇作家シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)が女優志望のヴァイオラ(グウィネス・パルトロー)と恋におち、『ロミオとジュリエット』を完成させていく物語です。
眠りにつく前、ヴァイオラが乳母から小さな棒を渡されます。これはようじや歯ブラシの原型で、日本では歯木(しぼく)といわれた道具。木の枝の先をふさ状にしたもので、古くからアジアでもヨーロッパでも使われていました。映画では口元に縦向きに当て、先端で歯をこする当時の歯みがきシーンが忠実に再現されています。
動物の毛を使った歯ブラシがイギリスに登場するのは1640年頃で、シエイクスピアの時代から約半世紀後のこと。細部まで行き届いた時代考証が、ドラマチックな恋物語に奥行きを与えているのです。

日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.14(2004/7)より 

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