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 総入れ歯では、自分の歯でかむ場合の20%しかかめません。
 もし、あなたの歯がすべてなくなり、やむを得ず総入れ歯になってしまったら…。今まで普通に食べていたものを「食べにくい」と感じることが、度々起こってくるでしょう。大好物が食べられなくなることだってあるかもしれません。
 たとえば、ステーキ。今までは、ほどよいかみ応えを楽しみながら味わっていたのに、総入れ歯になると、ステーキを見るだけで「固そう」と感じてしまうことになりかねません。りんごは、かじろうとした途端、入れ歯がはずれてしまうかもしれません。かた焼きせんべいに手を出すことも少なくなるでしょう。
 やわらかいイチゴだったら大丈夫、と思ったら大間違い。イチゴの小さな種が入れ歯と歯ぐきの間に入ってしまい、意外に痛くて食べづらく感じるかも。
お餅やガム、海苔なども、想像どおり入れ歯にくっついて食べにくくなります。
 また、入れ歯は熱を通さないので、熱い飲み物を飲む時には気をつけないと口の中を火傷してしまうことも。
 ある調査によると、総入れ歯になると、自分の歯でかんでいた時と比べて約20%しか、かむ力がでなくなってしまうのだそうです。そうなると胃腸への影響も心配ですね。すべての歯がなくなってしまうと、顔の表情もすっかり変わってしまいます。
"自分の歯の代わりをしてくれるのが入れ歯"と考えがちですが、実は総入れ歯になることによって、今までの食生活が激変してしまうといっても過昌.肖ではないのです。
 豊かで楽しい食生活を謳歌するためには、歯を大切にしていつまでも自分の歯で食べ続けることが、秘訣の一つといえそうです。

 よくかみしめて味わうことで人間らしい豊かな心が育つ
 スピード優先の現代、子供たちに「よくかむ」習慣をつけることが大切です。なぜなら、かむことと脳の働きはとても関わりが深いから。咀嚼は、栄養分の消化や吸収をうながすだけでなく、健全な精神や脳を育む役割もあるのです。
 たとえば、最初は面倒でも、がまんしてかむうちに、甘い・辛い以外の微妙な味わいがわかるようになります。また、体調もよくなります。この体験から「おいしさや体調の良さを得るには、よくかんだ方がいいんだ」と実感できれば、子供にとってかむことは「がまん」ではなく「習慣」になります。
 この体験を通して、子供たちはあらゆる面において、「より大きな喜びのためには、がまんも必要である」ということを無意識に学ぶことができるのです。
 また、よくかむ習慣は、自分で物事をしっかり考えられる、人間らしい脳を育てます。
反対によくかまないと、がまんのできない幼稚な脳をつくる危険性があります。「かみしめて味わう」という言葉のように、かむことは人間の感性や思考を深める重要な要素。言い換えれば、かむことは命の大切さを知ることであるとも言えるのです。
 ぜひ子供たちには「早く食べなさい」ではなく、「よくかんで食べようね」と声をかけてあげてください。
大島清 (おおしまきよし)
1927年広島生まれ。東京大学医学部卒。ワシントン大学助教授、京都大学霊長類研究所教授を経て、現在、京都大学名誉教授、愛知工業大学客員教授。専門は大脳生理学。執筆、取材、講議、講演などにエネルギッシュな活動を続ける。『子供が伸びる脳の育て方』など、脳の発達の見地から子育てに関する著書も多く記している。

 中高年層は、歯の根元のむし歯にこ注意ください

 人生にはむし歯にかかりやすい時期が3度あります。最初は乳歯が生える時、次に永久歯が生える時、そして3番目が中高年期。
 最初の2つのむし歯が歯の表面(エナメル質)にみられるのに対し、中高年のむし歯は歯の根元(象牙質)に目立ちます。これは年とともに歯周病などが進み歯肉が下がり、歯の根元が露出してくるため。
 歯根部分の象牙質は、歯の表面を覆うエナメル質よりも酸に弱くて溶けやすい性質。
歯肉が下がったぶん、むし歯のリスクが高まり、そのためにも歯周病の予防は大切なのです。また、年をとると唾液の分泌が減ることもむし歯になりやすくなる一因。
 健康な歯と歯肉を保つこと、そして唾液をよく出すことを意識して、よくかんで食べるよう心がけてください。


 スキンシップがないと指しゃぶりに影響がある?

 子供の指しゃぶりはよく見られる行為です。乳歯列が完成して、あごの発達時期に入るのは4歳過ぎから。4、5歳まで指しゃぶりが止められないと、指の力で前歯が押し出されるなど、歯並びに影響してきます。その状態が続くと、上下のかみ合わせのバランスが失われ、正常に前歯を使ってものをかむことができなくなります。さらに、口蓋(口の中の天井部分)が変形するとサ行や夕行が言いにくいなど、発音障害の原因になることも。
 子供なりの欲求不満や情緒不安が原因していることも多い指しゃぶり。手足を使う遊びをしたり、手をつないで添い寝したり、十分スキンシップをはかることが一番の解決策です。しかるのではなく、しゃぶっていないときにほめてあげるなど、自然にやめられるようご家族で協力しましょう。


 映画の中のデンタルシーン

【マッチスティック・メン】
 病的なまでの潔癖症で強迫症状に悩む、詐欺師のロイ(ニコラス・ケイジ)。別れた妻との間に娘がいるとわかり、突然ロイの暮らしに14歳のアンジエラが出現します。
ちり塵ひとつない力ーペットを土足で歩く、ピザの食べかすをこぼす…、
ピカピカの自宅を汚されるのを何より恐れるロイでしたが、完壁な秩序をアンジエラに破られるたび、不思議と強迫症状は軽くなっていきます。
 ある日、歯みがきをするロイに「詐欺の手口を教えて」とせがむアンジェラ。汚い仕事に娘を巻き込めないと、無視して歯をみがき続けるロイがユーモラス。神経質な必死の形相に、父親の自覚と娘に頼られる嬉しさが入り混じる、楽しいシーンです。
 現代では一時的な不安を解消するため、必要以上に手洗いや入浴をくり返す強迫症状が増えており、歯みがきもその一つ。毎日きちんとみがくことは大切ですが、行ぎ過ぎたケアは歯や歯ぐきを痛めてしまうので、くれぐれもこ注意を。

日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.16(2005/7)より 

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