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口腔ケアは元気の秘 〜介護予防とお口のケア〜
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歯の健康を広く伝えるために年に一度開催されていス「歯の健康シンポジウム」。 2006年は、介護と口腔ケアの深い関わりをテーマに要介護者、高齢者の健康状態を改善し、将来の介護予防につながる口腔ケアの重要性について話し合われました。 その中からパネルディスカッションの内容をレポートします。 |

ロで食べることで生きる意欲が湧く! いつ当事者になるかわからないのが介護の問題。誰もが介護する側、される側、両方の可能性を持っています。今回のシンポジウムでは口を使って食べることの意義や、介護中の口腔ケアの役割について話し合われました。 リハビリ看護の施設を主宰する田中靖代さんは、介護が必要な方でもできる限り、自分の口で食べられることをめざしています。「食べることは人間らしい生活行動の基本。寝たきりだった方も自分で食べられると、だんだん声が出て話ができて、笑顔になり、生活全般に意欲が生まれます。食べることで“その人らしさ”が出てくるんですよ」。 食べることは口や頬、指先を動かし、姿勢を支える行為。そのため歌を歌う、字や絵を書く、花を生けるなど、直接食には関係ないように思える趣味の活動も、食べるための大切な訓練として大いに取り入れているそうです。「かむこと自体に満足感がある」と語るのは、医師としてリハビリ指導にあたる藤谷順子さん。「柔らかいものしか食べられない嚥下障害の患者さんによると、硬いものをかんで飲み下した時の喜びは大きいと。かめなくなって気づく喪失感があるんですね」。 女優の安藤和津さんは2年間お母様を介護し、人間の「食べたい」「かみたい」という欲求はすごいと実感されました。寝たきりでほぼ意識のない状態でも、食べ物のことを話しかけると反応が返ってきたそうです。「母は歯が丈夫だったので、“かみたい”という気持ちが最後まで強く、口に入れたチューブをかみしめて離さなかったほど。でも口で食べられなくなった途端に自慢の歯がガタガタになり、かむことがいかに大切か思い知りました」。
要介護者の口を上手にケアするために 食べることも話すこともできないお母様を介護する中、安藤さんが大切にしたのは日常的な口腔ケアでした。「何か目標がないとくじけてしまうので、歯みがきをしながら『食べられるようになったら、えびの天ぷら食べようね』など話しかけると、普段は意思表示できないのに、少し頷(うなず)いたり、首を振ったりしてくれたんですよ」。介護中の口腔ケアは、話しかけ触れあいながらコミュニケーションをとれる機会でもあります。お互いの気持ちを前向きにする効果も大きいようです。 摂食機能の回復に取り組む歯科医師の植田耕一郎さんは、今までの医療では口の中の健康対策が後回しだったことを指摘。「せっかく身体は健康に戻っても、“口は寝たきり”という人が多かったんですね。再び食べられ、話せるためには口にもリハビリが必要で、口腔ケアは欠かせません」。 ただ、年配になると健康な人でさえ歯のケアはおろそかになりがちで、寝たきりや認知症などの場合は本人が他人に口腔ケアをされるのを嫌がることが多いのも事実。これには「気持ちが通じ合うと、大きく口を開けて歯を見せてくれる」という安藤さんの言葉がヒントになりそうです。 藤谷さんもリハビリの際に患者さんに拒絶されることもあるそうですが、「できないことにイライラするより、うまくいったことを“すごいですね!”と励ますこと」を心がけています。 「ご家族に認知症の方がいれば、その人が嬉しいと思うことを先取りするようにしてみては? 歯みがきや食事で口を開かなくても歌は歌う、散歩に出ると会話ができるとか、別の突破口が見つかるかも」というのは田中さん。 大切なのは、症状が良くなることを介護する側も心から喜び、嬉しく思うこと。どんな状態でも、目の前の人が喜んでいる気持ちは必ず伝わるもので、さらに「口を尖らせた怒った顔では口は開かないし、ものも食べられないんですね。食べるためには笑うことが必要」とのことです。
自分のケアの充実が本当の介護予防に 今の高齢者はいわば、歯みがきを大切にする習慣や意識がまだ定着していなかった世代。でも今、私たちがしっかりと歯と口の大切さを認識することで、必ず未来は変わると藤谷先生は訴えます。「健康なうちから自分のケアを充実させることが、本当の意味での介護予防だと思います」。確かに正しい意識や習慣を今から身につけておけば、介護をする側になっても、される側になっても、口に対して無防備ではいられなくなりそうです。「普段から家族が大きな口を開けて、歯を見せ合える信頼関係がとても大事」というのは安藤さん。 大らかに笑いあい、口の中を注意しあえる関係は、もしもの介護生活でもあらゆる点で大きな助けになることでしょう。 植田さんによると、どうやっても口を開かなかった患者さんが、ひとさじのミカンゼリーを差し出すと口を開けてくれたことがあるそうです。「それをきっかけに目を開き、表情が戻り言葉が出てくる…という変化が現れた。まさに“命のワンスプーン”です。口が元気になることは、全身が元気になる第一歩ではないでしょうか」。 シンポジウムの最後は「食べる、しゃべる、笑うという、人間だけが持つ口の機能を十分に使って、人生を豊かにしていきましょう」という松田輝雄キャスターの言葉でしめくくられました。
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上田教授の話 ロが果たす役割は予想以上に大きなもの 「同じ力ロリーでもチューブを通して栄養を摂る(経管療法)と、口で食べるのでは雲泥の差。病気で体重の落ちた患者さんが経管療法で太ることはほぼありませんが、食事を再開した途端に体重が増えることも。五感を使って口で食べることで、消化吸収の状態が格段に良くなるのです。 口を使うことには未知数の可能性があります。要介護者の口腔ケアは、口の機能を回復するための大切なトレーニング。口の果たす役割をご家族が正しく知って、歯や舌の清掃に気を配るだけでも、介護状態は大きく改善されるでしょう。 たとえ寝たきりでも、口を使うことをあきらめないでほしいと思います。 たった一口をきっかけに、身体の健康だけでなく、記憶や感情が蘇ることが少なくありません。口が持つパワーを信じて、自分の口、ご家族の口を大切にしてください」。 |
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日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.19(2007/2)より |
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